『このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法』は,転職に関する不安や葛藤を解決する一冊です。物語形式が採用されているため,普通の転職本と比べても読みやすく,本を読むのに慣れていない方でも苦なく読むことができます。
また,「マンガ版」も用意されているので,どうしても活字が得意ではないという方は,無理をせずマンガ版を選んでしまうのも良いでしょう(同じ内容がビジュアルで理解できます)。
目次
「誰にも聞けない転職のモヤモヤ」がある人におすすめ
本書の冒頭に「誰にも聞けない転職のモヤモヤ」として以下の悩みがあげられています。
- 同期は,優秀なやつから辞めていく。自分はこのままでいいのか?
- 「本当にやりたいこと」が,いつまでたっても見つからない!
- この仕事,ひょっとしていつかなくなる?
- 自分の「市場価値」っていったい「いくら」なんだろう?
- いまのままじゃいけない気がするけど,転職して給料が下がるのも嫌……
本書は,これらの悩みをストーリー形式で一挙解決してくれるので,上記のようなことを感じている方は,親和性が高いと言えるでしょう。
『転職の思考法』の目次
本書の構成は,以下の通りです。
- 第1章:仕事の「寿命」が尽きる前に,伸びる市場に身を晒せ
- 第2章:「転職は悪」は,努力を放棄した者の言い訳にすぎない
- 第3章:あなたがいなくなっても,確実に会社は回る
- 第4章:仕事はいつから「楽しくないもの」になったのだろうか
本書は,30歳になったけれど特別な専門性もない主人公の青野と,経営コンサルタントの黒岩仁(くろいわ・ひとし)を中心に話が展開します。
「30歳前後がキャリアの分かれ道—」
僕が本屋で手に取った雑誌のコピーには,そう書かれていた。パラパラとページをめくると,赤の太字で書かれた特集に目がとまる。そこには「40代で昇進ポテンシャルがなくなった,大企業サラリーマンの悲惨な結末」が生々しく描かれていた。
ひょんなことから黒岩と知り合い,転職についての思考法を身に付けていきます。
転職エージェントの現実と「いいエージェントの五箇条」
本書を読んでいて面白いのが,度々出てくる,転職エージェントの闇の部分です。
しかし,断言しますが,普通の転職エージェントに登録しても「自分にピタッと合う会社」は絶対に紹介してくれません。なぜなら,ほとんどの転職エージェントは短期的な視点でしか物事を見ておらず,加えて,彼らのビジネスモデル上,1秒でも早く「企業との面接」をするよう勧めてくるのは当然だからです。悲しいですが,しかたのないことだからです。
そして,「ビジネスモデル」は本文の中で詳述されます。
黒岩いわく,転職エージェントは,成果報酬型であることがほとんどらしい。そしてその報酬を受ける権利は「転職候補者が企業と最初に接触した時点」で決められる。
たとえば,ひとりの候補者が,二つの転職エージェントからA社を紹介された場合,最初に候補者とA社の接点を作ったエージェントが報酬をもらう権利を持つ。
だから,どれだけ手塩にかけて転職者を世話しても,最終的に他社から紹介された企業に入社してしまうと1円にもならない。従って,転職エージェントは,他のエージェントとの接触を嫌い,できるだけ早くたくさん企業を紹介し,受けさせようとするのだ。
これだけ聞くと,転職エージェントが悪のように感じますが(笑),そういう意味ではなく,そもそも転職先を探す方法はいくつかあり,それぞれメリットとデメリットがあるということです。
- ヘッドハンティングを受ける
- 転職エージェントに登録し紹介を受ける
- ダイレクトリクルーティング型のサービスを使う
- SNSなどのマッチングサービスを使う
- 直接応募,または友人から紹介してもらう
転職先を探すには上記のようなチャネルがあるため,転職エージェントだけに絞ってしまうのは早計ということになります。反対に言えば,SNSだけ,直接応募だけというのも危険ということになります。
本書では,「いいエージェントの五箇条」が紹介されています。
- どこがよかったか,入社するうえでの懸念点はどこかをフィードバックしてくれる
- 案件ベースでの「いい,悪い」ではなく,自分のキャリアにとってどういう価値があるかという視点でアドバイスをくれる
- 企業に,回答期限の延長や年収の交渉をしてくれる
- 「他にいい求人案件は,ないですか?」という質問に粘り強く付き合ってくれる
- 社長や役員,人事責任者などと強いパイプがあり,彼らとの面接を自由にセットできる
多くの転職エージェントは無料で利用できるので,転職エージェントのチャネルを活用するときは,上記のことを念頭に置いて利用すると良いでしょう。
くれぐれも,どの方法が「良い・悪い」ではなく,それぞれの方法にメリットとデメリットがある,良い人材紹介会社,悪い人材紹介会社,良いエージェント・悪いエージェントがいるというように判断できるようにしましょう(相性が良くないときは担当エージェントを変えることもできます)。
「一生食える」を確保する4つのステップ
1章では,「一生食える」を確保する4つのステップがあげられます。
- 自分の「マーケットバリュー」を測る
- 今の仕事の「寿命」を知る
- 強みが死ぬ前に,伸びる市場にピボットする
- 伸びる市場の中から,ベストな会社を見極める
まずは自分を知り(マーケットバリュー),次に業界や職種といった仕事を知り,そして,伸びる市場にピボット(方向転換)します。
「強みが死ぬ」については,次のように述べられています。
従業員やサラリーマンは乗っている船が危ないとなったら,むしろかたくなに動こうとしなくなる。この会社にしがみつきたい! と考える。だが,それは悪手中の悪手。そうならないための方法がピボット型キャリアだ。
そこで,伸びるマーケットを見つける2つの方法として以下があげられています。
方法①:複数のベンチャーが参入し,各社が伸びているサービスに注目する
方法②:既存業界の非効率を突くロジックに着目する
これらの方法をひとりで考えるのが難しかったり,(自分にとって)「ベストな会社」を見つけるのが難しい場合は,転職エージェントのようにその業界や職種について深い情報を持っているところを利用するのも良いでしょう(こういうときに転職エージェントの強みが活用できます)。
自分に「ラベル」を貼り,コモディティから脱出せよ
本書では,自分に「ラベル」を貼ることが大切だといいます。
「これからの時代にどんなやつが強いかわかるか? それは個人として『ラベル』を持っているやつだ。『ラベル』とは,自分だけのキャッチコピーのようなものだ。組織が,個人を守ってくれる時代は終わった。いつ会社から放り出されるかわからない。そのときにひとつでもいいから個人として『ラベル』を持っていないと,君は完全なコモディティになる」
コモディティとは「いくらでも替えがきく存在」ということです。
また,コモディティにならないための『ラベル』は理想が入っていても良いといいます。
「最初は嘘八百でいい。理想や,憧れも大歓迎だ。大事なのは,仮でもいいからそのラベルを自分でつけること。そうすれば,やるべきこと,仕事を選ぶ基準が見えてくる。たとえば君が自分を「新規開拓の鬼」だと定義したとしよう。そうしたらそのラベルがより強固になるように仕事を選んでいけ。今,君はひとつの判断軸を得たわけだ。それは『マーケットバリュー』とは違う。もっと,心からワクワクするような軸だ」
『ラベル』については,『転職2.0』が詳しいので,そちらを読むのも良いでしょう。
2021.07.14
『転職2.0』要約 方法論に落とし込まれているので,周りに差をつけることができる
『転職2.0 日本人のキャリアの新・ルール』は,米国の人材系企業・LinkedIn(リンクトイン)の日本代表である村上臣(むらかみ・しん)さ...
著者について
『転職の思考法』の著者は,北野 唯我(きたの・ゆいが)さんです。ボストンコンサルティンググループを経て、ワンキャリア(ハイクラス向け就職サイト)に参画しています。
まとめ
本書は,このままでいいのかなと漠然と感じる方が読みたい一冊です。
後半,次のように述べられています。
「世の中で最も恐ろしい言葉のひとつは,失敗という言葉だ。これほど定義が難しく,残酷な言葉はない。多くの成功者が言うように,最後さえ成功すれば,その途中の失敗も,すべては『必要だった』と言える。要は考え方次第なんだ。だが,その中でも『100%失敗を招く,唯一の条件』というものがある。それは腹を括るタイミングで,覚悟を決めきれなかったときだ」
あなたがポジティブな気持ちで次の一歩を踏み出せるのを応援しています。
書名 | このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法 |
著者 | 北野 唯我 |
出版社 | ダイヤモンド社 |