『キャリアロジック』は,アクシス株式会社の代表取締役兼転職エージェントである末永雄大さんによる「キャリアの勝ちパターン」について解説された本です。
「はじめに」に書かれた言葉はとても説得力のあります。
有名起業家やインフルエンサーがキャリアについて発言をしています。いわく,「好きなことだけしていればいい」「キャリアは偶然や結果論」などの内容です。彼らは自分が低年収で休みもほとんどなく,実績や稼げるノウハウがない状態でも同じことを言えるのでしょうか。
実は,彼らの主張には再現性はありません。
要するに普通のビジネスマンにとって,彼らの主張の多くは意味がないのです。
だからこそキャリアのプロが,きちんとしたファクトや経験に基づいた再現性が高いキャリアの勝ちパターンを示す必要があると考えています。
ここまで読んで,「わかる!」となった方には,きっと有意義な一冊となるでしょう。
キャリアの不安がある人におすすめ
本書は,キャリアの不安がある人におすすめです。
著者の言葉を借りると,これまでの日本の雇用形態は,「人生において目指すべきものの正解,幸せの形」が明確だったため,努力を継続しやすいものでした。
しかし,現代のように多様な選択肢がある時代は,逆にキャリアの不安を感じやすくなっています。
そこで,本書では,「キャリアにおける勝ちパターン」を示すことで,これらの不安を解消できるようになっています。
『転職の思考法』の目次
本書の構成は,以下の通りです。
- 第1章:キャリアの真実
- 第2章:仕事とは何か?
- 第3章:ポジショニング戦略
- 第4章:競争優位の戦略
- 第5章:キャリア業界の仕組みを知る
- 第6章:本当に幸せなキャリアとは
まずは,キャリアについての真実を把握し,そこから本書の肝である「ポジショニング戦略」について学びます。さらにそこから上を目指している方は,「競争優位の戦略」も役立つはずです。
また,「キャリア業界の仕組みを知る」では,採用ベンダー(転職エージェント,求人サイト,会社口コミサイト)についても詳しく解説しています。これらの方法は良い悪いではなく,それぞれメリットとデメリットがあるものなので,ケースや向き不向きによって使い分けると良いでしょう。
キャリア構築のルールが変わった
前述のように,今はさまざまな生き方ができるようになった反面,キャリアを迷走してしまいやすくなっています。そこで,キャリアの成功を担保するために,キャリア戦略が重要になってくるといいます。
キャリア戦略を考えるには,まずキャリアのルールを把握しなければなりません。(中略)
ルールを知らないままスポーツをすることが難しいように,キャリアにおいても,ルールを知らないままでいることは,自分にとって大きな不利益となります。ルールを知らないままに働いていると,「好きな商品に関わる仕事をしたい!」と特にロジックもなく働いていると,「好きな商品に関わる仕事をしたい!」と特にロジックもなく思いつきで仕事を選択してしまい,キャリア設計に失敗してしまうことになります。
キャリア戦略の全貌
「キャリア戦略」とは,キャリアにおいて今の経験やスキルや実績を活かして自分の目的・目標を達成する活動や取り組みだといいます。
キャリア戦略は「ポジショニング戦略」と「競争優位の戦略」の2つの戦略の掛け算になります。
- ポジショニング戦略:自分にとって有利な場所を探す努力のこと
- 競争優位の戦略:入社先でいかに定着・活躍できるかを考えること
努力というと語弊があるかもしれませんが,本書では,会社の同僚よりも成果を出すことに必死になるのではなく,どの業界・会社・業界を選ぶかでキャリアにおける優位性を獲得するのだといいます。
優位性を発揮できる会社を選んでも,入社後すぐに退職してしまっては,経歴を荒らしてしまうだけ。社内で活躍できても,それが市場価値で評価されないものであれば,努力が報われません。
そのため,この2つをバランスよく両立する必要があるのだといいます。
ベンダーの仕組み,ロジックを理解しておく
本書において,興味深い部分のひとつが「ベンダーの仕組み」です。
本章では,転職エージェント,求人サイト,会社口コミサイトについて解説していますが,転職エージェントの部分では,さらに大手エージェント,業界・職種特化型エージェント,中小個人エージェント,サーチ型エージェント(ヘッドハンティング会社)と分類して詳細まで解説しています。
たとえば,多くの人が利用する大手転職エージェントについては,以下のようにあります。
大手転職エージェントは,とにかく求人数が多いです。総合デパートのような存在で幅広い業界・職種の求人を豊富に抱えていることが強みです。
しかし,キャリアアドバイザーのサポートはややマニュアル的な対応で,自己分析,面接対策,企業研究などはそこまでサポートしてくれないという話をよく聞きます。過度に転職相談や選考対策サポートに期待はせず,豊富な求人を紹介してもらえる窓口として使えば,強い味方になるでしょう。
中小・個人エージェントは,大手転職エージェントのメリット(求人数)とデメリット(キャリアアドバイザーのサポート)が逆になった感じを想像するとわかりやすいと思います。
このように,ベンダーのうち転職エージェントひとつとっても,メリットとデメリットが異なります。これらは求人サイトや会社口コミサイトなどにも共通するので,何が良い・悪いと一刀両断するのではなく,自分にあったエージェント(または方法)を活用すると良いでしょう。
著者について
『キャリアロジック』の著者は,末永雄大(すえなが・ゆうた)さんです。新卒でリクルートエージェント(現リクルート)に入社,その後,サイバーエージェントに転職し,2012年に独立をしています。Webメディア「すべらない転職」を運営し,年間数百人以上のキャリア相談に乗っています。
YouTubeでは,転職について多数の動画を公開しています。
まとめ
本書は,キャリア戦略を知るための本です。
転職活動を控えている方はもちろん,今すぐ転職をするわけではない方も「好きなことだけしていればいい」ではない,正統派の「キャリアの勝ちパターン」を理解しておきましょう。
書名 | キャリアロジック |
著者 | 末永雄大 |
出版社 | 実業之日本社 |